「星まつり」疑問・質問

世の中にはいろいろな運命学や占星術がありますが、それらの多くは節分を年の変わり目としています。「星まつり」ではその年の変わり目に、生まれながらに自分自身の運命をつかさどる「運命の星」を祀って運気の転換を図るのが「星まつり」です。
インド発祥の密教占星術にはさまざまな星がありますが、中心となるのが北斗七星です。
北斗七星のそれぞれを、各個人の生まれ年の干支に当てはめて、本命星としています。
密教には、単に運命や吉凶を占う占星術だけではなく、星の供養を行って吉運をさらに増大させて、凶運を吉運に転換させる法があります。それが「星まつり」です。            

        
インドでは、仏教が広まる以前から、火の中にお供物を投じて焚き上げると、その煙が天へと登り、煙が再び供物に戻って天の神々に供養されているという考えがあり、その儀式が護摩の原型だと考えられています。
仏教の最後に登場した密教では、護摩を単なる供養法としてではなく、護摩の火を「仏の智火」とみて、その智慧の日で煩悩を焼く、という考え方が構築されました。

なぜ、護摩の炎で護摩木をお焚き上げするかといいますと、護摩木に託されたお願いごとの中には、煩悩という自分の欲望も入っていることもあり、その煩悩を護摩の炎で焼き尽くすという意味もあります。護摩木をいただく際には、皆さんの浄財を捧げることになりますが、その供養に対して仏さまからのお力が加わります。この2つのお力で、障りなく祈願成就へと向かうわけです。
日本には古来より、山そのものを神として拝む山岳信仰があり、山中に入って神気をいただいて、自分自身を生まれ変わらせるという修行がありました。山伏は、自然の中で野を駆け山に伏して修行をしますが、私たち阿含宗信徒も、お釈迦さまの説かれた成仏法を修行するためには、強じんな体力と意志が必要です。それらを錬磨する上で、山伏修行を行うことはとても役に立つわけです。

山伏は、柴燈護摩において、護摩木に祈りを託した方々の罪けがれを背負い、護摩の浄火で自分自身とともにそれらの罪けがれを焼き尽くすと観想することになっています。このように「星まつり」は単に祈願をかなえる法要ではなく、それぞれの人々が持つ煩悩や因縁を焼き尽くして運命の転換を図り、運気を増強していく場なのです。
まず、日本古来の伝統にのっとっているということです。密教寺院では昔から、土地にまつわる神様を仏法守護の護法神としてお祀りしてご加護を願ってきました。また、神々のために神社の境内にお寺を建て、神様に仏法の祈りを捧げることで、仏法の力によって国土・郷土を守護する神力を高めるというのが日本の神仏習合の一つの起源です。

また阿含宗の開祖は、日本の神界に非常に深いご縁を持ち、自身も神界修行をしていました。神界修行によって強じんな体力と精神力、そして霊的な力が得られます。これらはお釈迦様の成仏法を進めていく上で大変役立ちます。

阿含宗は、1993年に「伊勢神宮第61回式年遷宮奉祝・神仏両界大柴燈護摩供」の厳修以来、神仏両界の秘法をもって「星まつり」の護摩をお焚き上げしています。お釈迦様の成仏法に基づいた仏界の力に、神界の力が加わることで、より大きな世界救済の力が発揮されているのです。こうした理由から「星まつり」では神界壇、仏界壇の2基の護摩壇で護摩木をお焚き上げしています。
開祖のご著書「一九九九年カルマと霊触からの脱出」(平河出版社)の中に、
「この年(1980年)の大柴燈護摩供で、わたくしは修法をはじめて間もなく、非常な衝撃を受けたのである。それはおびただしい不成仏霊の群れであった。四方八方からひしひしとおしよせてくるすさまじい霊障であった。これははじめての経験であった。わたくしは一瞬呆然とし、次いで、それと知って、精魂こめて成仏法を修した。おわってから、これはいったいどういうわけであろうかと考えてみた。すぐにわかった。
ことごとく、参拝者がともなってきた不成仏霊だったのである。
(略)
そこで、わたくしは、このつぎからはべつに解脱成仏壇をきずいて、これらの不成仏霊を供養し、成仏法を修してあげなければならぬと考えたのである」と書かれております。
そこで阿含宗では、1981年から金胎両壇のお護摩を焚くようになりました。

日本の密教の法は「金剛界の法」と「胎蔵界の法」から成り立っています。「金剛界の法」は主に、自分自身の修行を進めると同時に多くの人たちの祈願を成就させるための力を備えるという仕組みになっています。
「胎蔵界の法」では、多くの他者を救うことに重点が置かれています。その多くの他者とは、生きている人だけを指すのではなく、亡くなったお霊も入ります。
お釈迦様の成仏法を、金剛界と胎蔵界という密教の形式で修法していくのが「星まつり」です。
1981年の「伊勢神宮第61回式年遷宮奉祝・神仏両界大柴燈護摩供」以後、神仏両界の秘法によって「星まつり」の護摩を奉修することとなり、金剛界壇を「神界壇」、胎蔵界壇を「仏界壇」としてお護摩をお焚き上げしています。
神界の神々は、私たちの目に見える形で姿を現されることがあります。これが現形です。阿含宗では、護摩法要の火を借りて諸仏諸尊が現形されています。
阿含宗はお釈迦様の教法を伝える唯一の経典である「阿含経」を奉持し、そこに説かれる成仏法を実践するただ一つの教団です。その阿含宗の法の正しさを証明するために、仏様が自らのご意志によって現形されているのです。
私たちが「まさしく仏様だ」と信じることができるお姿で現れてくださるのが現形です。
私たちが強い信をもって祈ることで、仏様も私たちにご加護の力をくださり、救ってくださる。そこに仏様の現形の意味があるわけです。

私たちの信仰心や真心と、仏様の衆生を救おうというお気持ちとが相響きあって、大きな力が生じます。これを「感応道交(かんのうどうきょう)」といいます。私たちがまず護摩の浄火に信仰心と真心を込めます。それに仏界の仏が感応されるのです。
広い意味では、参拝も修行に入りますが、それだけでは十分な修行とは言えません。人のために祈ることもあるでしょうが、自分や家族の願い事を祈る人がどうしても多いでしょう。本当の修行とは「我」を超えていかなければなりません。因縁を本当に切ろうと思ったら、自分の誤った「我」を消し去っていかなければなりません。
「星まつり」の修行者は、自ら交通費などのお金を出して本山へ行き、自分の貴重な時間、身の働きを仏様に捧げて、1日中修行するわけです。これは積徳の修行であると同時に、自分自身の「我」を超える修行でもあります。
ですから、「星まつり」に参拝することはもちろん尊いことなのですが、そこで修行するならば実に素晴らしい奉仕供養になるわけです。
インドで始まった仏教は、伝播のルートによって3つに分けられます。その1つが北伝仏教で、インドの北の方を通じて中国・韓国・日本に伝えられた仏教です。これは大乗仏教が中心です。

2つめはスリランカやタイ、ミャンマーなどに伝わった南伝仏教で、戒律を主体とします。難しい成仏法を修行するというよりは戒律を守っていく仏教です。
阿含宗本山にもスリランカの僧侶が来られ、「星まつり」に参加されたりしています。

3つめは東伝仏教です。ヒマラヤ地方、チベットやブータン王国に伝わった仏教です。この仏教では密教を非常に重んじており、非常に強い霊力を持っているのが特徴です。インドから伝えられた力強い密教の法がこれらの地域で練り上げられました。
その中で、ブータン王国には強い霊力を伝える修行の環境がそのまま残っています。開祖はブータンの霊力・霊法を体得されている最高峰の高僧から、ブータン仏教の霊力・霊法の神髄の全てを受け継がれました。
ですから、阿含宗は、お釈迦様の成仏法にブータン仏教の強い霊力が加わった「完全仏教の法」をもって、「星まつり」の護摩を修法しているわけです。

「星まつり」で祭壇奥に祀られている「トンドル(大曼荼羅)」には、その「完全仏教の法」の力が込められています。さらにその手前には、お釈迦様のご聖骨である真正仏舎利が奉安されています。「星まつり」の祭壇にも、完全仏教の法が表されています。この「完全仏教の法」で「星まつり」を営むことによって、より大きな救済力が発揮されます。
(出典:【阿含宗全国誌 アゴン・マガジン 2017年1・2月号  炎の祭典・第44回「星まつり」直前特集】より)